シャーリイ・ジャクスン『ずっとお城で暮らしてる』

ずっとお城で暮らしてる (創元推理文庫)

ずっとお城で暮らしてる (創元推理文庫)

  • 文庫本の装丁も美しい、甘美な狂気の世界

SNS「やっぱり本を読む人々。」の企画でおススメされた本作、
タイトルが妙に気になって、そそくさと入手。
読了直後の感想は、一言で言うと
「うわわわわ…!」
これにつきる。
ぞくぞくするけど、美しい。
目が離せないけど、恐ろしい。
万人受けはしないかもしれない。
でも、桜庭一樹が好きな人ならきっと気に入ると思う。
読み終わってあらためて眺めると、やっぱりタイトルが素晴らしいなぁ。


メアリー・キャサリン(メリキャット)、メリキャットの姉コンスタンス、
叔父のジュリアンは3人でブラックウッドのお屋敷に暮らしている。
村の中の大きなお屋敷。
なぜか一家に憎しみをいだいている村人たち。
屋敷の外に出られないコンスタンス、体の具合が良くないジュリアン叔父さん。
けれどお屋敷の中は、外界から守られ、閉鎖された幸せな世界。
平穏な日々は、従兄弟チャールズの登場で突然終わりを告げるー。


すべてメリキャットの目線で書かれているわけだけど、
どこまでが現実でどこからが狂気なんだろうか?
ブラックウッド家への敵意や好奇心を隠しもしない村人。
じわじわと、やがてはっきりと表現される悪意から逃れ、
メリキャットの口癖である「月の上」に最後はたどりつく姉妹。
現実世界では成立しない美しさと、誇張された(たぶん)醜い現実。
「メリキャット、お茶でもいかがとコニー姉さん
とんでもない、毒入りでしょうとメリキャット」
村の子どもたちが歌うこの歌の呪力は、まるでマザーグースのよう。
本作を思い出すたびに、頭の片隅で小さく流れると思う。


同じ著者による短編集『くじ』に挑んでみたいけれど
なんと文庫がない。単行本2100円!高っ!
うーん。図書館で検索かな・・・。