米澤穂信『愚者のエンドロール』

愚者のエンドロール (角川文庫)

愚者のエンドロール (角川文庫)

  • またも文化祭準備中。古典部シリーズ第2作

第1作『氷菓』も、神山高校文化祭がらみのお話だったけど
第2作となるこの作品も、文化祭にまつわるお話。
2年生のあるクラスが映画の自主制作をしているんだけど、
ストーリーを全部書かないうちに脚本家(高校生)がダウンした。
なんとか撮影を終わらせたいので、すでに撮影が終わっている問題篇を見て
解決篇を考えてくれないか?という依頼が。
省エネ探偵のホータローはもちろん断ろうとするけど、
好奇心の権化:千反田える嬢に押し切られて協力する羽目に―。


バークリー『毒入りチョコレート事件』へのオマージュとして書かれたらしい本作。
たしかに、ある一定の状況が示され、それに対して複数の人間が
それぞれの解釈を披露するという本作の形式は、毒チョコですね。
1度「これで行こう」となった案に対して「あれ、違うんじゃない?」
となるあたりも毒チョコにあったはず(記憶があいまいですが)。
ノックスの十戒とか、ミステリ小噺?がいろいろなところに出てきて、
それを読むのは楽しいかな。
最後の解釈はなんだか、個人的にしっくり来なかったけど。


自主制作をしてるクラスのメンバーからも4つほど意見があがるのだけど
いちばん痛快だったのは、広報班の女生徒。
メタ読みの一種のような自説を持っているんだけど、
反論に対して言った一言がすごかった。
「別にいいじゃない、鍵くらい」!
密室の解決をしようとしてる全メンバーおよびミステリ読みに対する、
あまりに力強い一言。
その一言だけでこのキャラが好きです。
これも米澤氏の視点として考えると、全体的には可もなく不可もない感じのこのお話が
急に面白くなってきます。


あとは第1作からの重要な隠れキャラである、ホータローのお姉ちゃん。
今回はネットを活用して参加してきます。
知らずに踊らされてるホータローはちょっと哀れかも。