米澤穂信『クドリャフカの順番』

クドリャフカの順番 (角川文庫)

クドリャフカの順番 (角川文庫)

  • いよいよ神山高校文化祭。今のところ古典部シリーズのマイベスト

古典部シリーズも3作目にはいりました。
4作目『遠まわりする雛』をまだ読んでないけど、この時点ではこの作品が
古典部シリーズの中でいちばん好きです。


これまでの2作で、ずっと話題となっていた文化祭。
氷菓』は文化祭で古典部が出版する文集の名前にまつわるミステリだし、
愚者のエンドロール』はとあるクラスが文化祭で展示するための
自主映画に関するミステリでした。
第3作となるこの作品は、その文化祭(神山高校文化祭、通称カンヤ祭)
いよいよ当日のお話です。


あとがきに作者本人が書いていましたが、
"本書の主役は、文化祭そのもの"だそうです。
文化祭というイベントは、参加する人それぞれにまったく違って映るはず。
そのためこの作品は、古典部シリーズとしてははじめて
ホータローの一人称小説ではなく
古典部員4人の多視点で描かれています。
個人的には、そこがこの作品の最大の魅力ではないかと。
この作品を読んでみて初めて、古典部員たちがちょっと身近になる感じ。
だってホータロー、他者に興味薄いんだもん・・・。


ふくちゃんは文化祭というイベントそのものを純粋に楽しんでいる。
それだけでなく、彼はホータローから見れば明るいというか、
能天気または楽天的なセリフが多いけれど、
内面ではやはりいろいろと考えているわけで、それがはじめてはっきりする。
また摩耶花はホータローから見ると扱いづらいキャラのようだけど、
けっこうまっすぐな、おもしろい子なんですよね。
ホータロー視点ではふくちゃんのことしか見てないように描かれているけど。
摩耶花の一人称パートは、この4人の中で個人的に一番好き。
(でも、なんでふくちゃんがそんなにいいのかはわからなかった)
える嬢のパートは、いつもの語り口調とほとんど変わらないのですが
そのことこそが彼女の特徴とも言える。
文化祭のいろいろなところに興味を覚えるあたりは
夜は短し歩けよ乙女』の黒髪の乙女のようであります。
(扱いがだいぶ違うけど)


これ読むと大半の人は自分の高校(とか大学)の文化祭を思い出すのではないかしら。
私は高校のときは、いつも文化祭と部活の大会が同日程になってしまって
ほとんど参加できたためしがなかった。
参加していたら、こんな感じだったのかなぁ。
大学は…学校自体ちゃんといっていないので
文化祭のときの空気なんて知りようもない。
そんな理由もあって、この空気は新鮮でした。
こんなにも祝祭感にあふれているのね。


そうそう、毎度登場するホータローのお姉ちゃん、今回初めて日本にいます。
今回は「わらしべプロトコル」で積極的に関与。
このプロトコル、かなりご都合主義ですが、私は好きだなぁ。