恩田陸『小説以外』

小説以外 (新潮文庫)

小説以外 (新潮文庫)

  • 文庫本1冊で14年間の恩田陸が読める、お買い得エッセイ


帯に「デビュー以来14年間の全エッセイを収録」とある通り、
2005年までに恩田陸が書いたすべての「小説以外」の文章が収められている作品。
小説家は作品で判断すべき、エッセイは読みませんという人もいますが(主義としてはわかる)、
この本は、そんな人にもハズレじゃないと思う。
恩田陸は基本的に、作者でもあるが読者でもある自分をすごく大事にしていて、
"つまんないと思われるくらいなら書かない"から。


エッセイを書くにあたって、「広告絡みと人生絡みの本は引き受けないと決めている」そうで
本の話が大半。自著にも触れているし、「マイベスト海外ミステリ」とか「マイベストSF」とか
彼女の好きな本の話もたくさん。
おかげで、再読も含めると、読みたい本が10冊以上増えてしまった。
本の話が多いせいか、「小説と全然違う」ということもなく
『三月は深き紅の淵を』の「回転木馬」のような印象です。


音楽や映像の話、お酒の話。
(読んだ時衝撃だった『ドミノ』を思わせる文体も、どこかにあった)
デビューからしばらく、彼女は兼業作家だったのだけど
(デビュー作も会社員をしながら夜中に書いたはず。
それが『六番目の小夜子』だから、この作家は凄い)
会社員をしながら小説を書いていた当時の忙しさを想像してしまう話もいくつか。


しかし、作家生活10周年を迎えた2003年のエッセイに
「これからはもう少し(刊行の)ペースを落とす」というようなことが書かれているけれど
どう考えても全然落ちてない。嬉しいことです。
これからも無数の小説を書いて欲しい。
読みきれないよーといいながら買いつづけます。