今日の読書:河合隼雄『とりかへばや、男と女』

河合隼雄『とりかへばや、男と女』読了。

とりかへばや、男と女 (新潮文庫)

とりかへばや、男と女 (新潮文庫)

すいません。普段の読書傾向にない「河合隼雄」を突然読み出しましたが
箱庭療法をやってみたいとかではありません。
単に「とりかへばや」に反応して買いました。
でも、なかなかおもしろかった。


ええと、「とりかへばや物語」というのは、
知ってる人は知ってると思うんだけど
平安時代に書かれた作者不明の物語です。
昔々、京都の大貴族・左大臣には2人の子がおりまして、
2人とも美貌の持ち主なんだけど、どういうわけだか
男の子は「姫君」として、女の子は「若君」として育てられる。
普通ある程度の年が行ったらやめそうなもんなんだけど、
この2人、なんとそのまま
若君(ほんとは女の子)
 ⇒元服(当時の成人式:男の子版)
 ⇒宮廷に出仕
 ⇒めっちゃ出世
 ⇒結婚(もちろん女性と。・・・もちろん?)
姫君(ほんとは男の子)
 ⇒裳着(当時の女の子の成人式)
 ⇒尚待として後宮に上がる
まで行ってしまうのであります。
その後、若君(女の子)の奥さんが妊娠しちゃうとか、
姫君(男の子)が後宮で仕えていた女性を妊娠させちゃうとか
ついには若君(女の子)自身がなんと妊娠しちゃうとか
いろいろと紆余曲折があり、最後には
2人が自分の立場を入れ替える―ってお話なんです。
このあらすじ、平安時代には相当な衝撃だったらしく(そりゃそうだ)
作者不明の割には、今なお物語として歴史に残っているわけね。

で、この「とりかへばや」、後世の国文学者の間では
荒唐無稽だの淫猥だの変態的だの言われ、
あまり評価がよろしくなかったらしいんだけど
その一方でこのストーリーにインスピレーションを受けた人も多く、
コバルト文庫時代の氷室冴子がこれを『ざ・ちぇんじ!』という少女小説にアレンジしてるんですよ。
この小説のサブタイトルが「新釈とりかえばや物語」。
『ざ・ちぇんじ!』はその後漫画化もされたため
ある一定の年齢層女子であれば、知ってる人は多いかも。
中学のときに『ざ・ちぇんじ!』を読んでた私としては
「とりかへばや」って見たら買っちゃうのね。河合隼雄であろうと。
結果的に、河合隼雄の文章がなかなか面白く、読みたい神話とかが
増えてしまいました。
たまには他ジャンルに手を出すのも良いね。