今日の読書:佐藤正午『Y』

佐藤正午『Y』読了。

Y (ハルキ文庫)

Y (ハルキ文庫)

  • "お前の人生は2つに枝分かれしている、ちょうどアルファベットのYの文字みたいに"

『ジャンプ』に続き、2作目の佐藤正午です。
『Y』も『ジャンプ』も、どっちも「あの時こっちの道を選んでたら…」的な
お話ですが、私はこっちの方が好きかも。
ちょっと村上春樹を思わせる文体も、この作品に合っていると思います。


ある晩、主人公・秋間のもとにかかってきた1本の電話。
相手はまったく覚えのない声で
「僕達はかつて親友だった」
「どうしても読んで欲しい物語がある、受け取って読んでくれ」
と言い出す。
最初は全然取り合う気のなかった秋間だけど、数日後
電話の相手・北川の代理人から渡された1枚のフロッピーには
すぐには信じがたい物語が描かれていた―


というお話なんですが、最初に書いたとおりこれはタイムワープものです。
かつ、パラレルワールドものです。
『リプレイ』は言うまでもないけど、この手の作品ってホントに多くて、
ぱっと考えただけでも『七回死んだ男』(西澤保彦)、『ターン』(北村薫)、
『トムは真夜中の庭で』(ピアス)なんて名作もあったねぇ。
まあそれだけ魅力的なモチーフなんだろうけど
名作が揃ってるジャンルなので、書くの難しいだろうなと思うんです。
でも、本作『Y』はいいです。おススメです。
ただのパラレルワールドもの(ただの?)に終わらせない、
「かつて親友だった」彼らの物語。
人生がどんなに多くのYで構成される別れ道でも、
きっと彼らは出会っていたであろうと思わせます。
いや、佐藤正午、なかなかいいじゃないか。